李歐       高村薫著   講談社文庫

 『惚れたって言えよ―。美貌の殺し屋は言った。その名は李歐。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。しかし、二人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。』
 高村薫は壮大なスケールの物語を書く人だけれど、これもまたすごい! じ〜んとしびれたまま一気に読みました。ハードボイルドなんだけど、それだけでは終わらない・・・。ラストはいい意味で意外。こうは終わらないだろうと思ってた。私同様、著者も二人を愛していたかな。(2002.11.16)


わが手に拳銃を       高村薫著   講談社
  『それは1発の銃声から始まった。15年前、大阪の町工場で母を撃った男はどこに?吉田一彰はその男・趙文礼をさがしていた。公安の田丸もまた趙を追っていた。ある夜、キタのクラブに現れた趙に中国語の電話がかかり、直後銃声が轟いた。そして、その時から一彰は、裏社会に生きる男たちの非情な闘いにのめりこんでゆく……。』
 高村薫としては初期の作品で、「李歐」の下敷きになった作である。「わが手に拳銃を」で何が言い足りなかったのか、どこを強調することにしたのか、7年後の「李歐」と読み比べることでストーリーテラーとしての成長を感じられて大変興味深い。「わが手に…」は、李欧とカズの運命的な結びつきの必然性の部分が弱い。その分銃に対するマニアックな部分が強調されてハードボイルドかな。私は「李歐」の方が好きだけれど、好みだと思う。できればどちらも読んで、切ないラブストーリーとも読めてしまう世界を楽しんでほしい。(2003.1.3)




ハリーポッターと炎のゴブレットJ.K.ローリング著   静山社

 『初々しい恋、痛々しい死、そして恐ろしい真実…クィディッチのワールドカップで、空に不吉な印が上がった。ヴォルデモートの復活か?巧妙に仕組まれた罠が、ハリーを三大魔法学校対抗 試合の選手に選ぶ。死を招く難題を、次々と乗り越えるハリー。しかし、親友のロンに異変が起こる。寂しいハリーの心を掴んだ女性は?多彩な登場人物が、ハリーの過去を明かし、ヴォルデモートの正体にせまる。そしてついに痛ましい犠牲者が・・・・・・。』
 文句なく楽しめるシリーズ4作目。一気に読みました。
 このシリーズ大人も子どもも楽しんで読んでいるけれど、見えている情景は少し違うかもしれないって思う。大人は大人の視点から、ハリーたちを見守る大人たちといっしょに彼らをはらはらどきどきしながら見守り、涙してる。きっと子どもたちは違う読み方をしてると思うなぁ。子供たちにはまた大人になったときに読み返してほしい。大人の立場というものもしっかり描けてる、それが世界中の大人にも子どもにも愛されてる理由なんだろうね。(2002.10.24)




闇から招く声 ドールズ     高橋克彦著   角川書店


 『マンションの一室でおびただしい血を垂れ流す男女のばらばら死体。奥の部屋から漏れてくる少年のすすり泣く声…。稀代の名キャラクター・泉目吉が対峙する連続猟奇殺人事件。』
 10年ぶりに刊行されたというシリーズ3作目。よかった、最近知って…。
ホラーはホラーなんだろうか?でも怖くはないけど…。詳しくは語れない。一作目からどうぞ、読んでみて〜。どんどん書きつづけてほしいシリーズだなぁ。



闇から覗く顔 ドールズ    高橋克彦著   角川文庫

 『仙台で個展を開いていた創作折り紙の第一人者・華村研は、何者かが江戸期の手法で見事に折り上げた“紙の蜻蛉”を会場で見つける。その夜、弟子の女性が殺され、現場にはまたも紙の蜻蛉が落ちていた。華村を凌駕するほどの技の持ち主は誰か。彼が探し当てたのは、八歳の無邪気な少女・怜だった。しかも怜の身体には、江戸の天才人形師・泉目吉が甦っていた―。あらゆる仕掛け物から、はては人情の裏側にまで通じた比類なき名キャラクター、目吉先生が鮮やかに謎を解き明かす四つの事件。「紙の蜻蛉」「お化け蝋燭」「鬼火」「だまし絵」を収録。
 短編集は好きではないのだが、目吉さんの大ファンになっちゃって…。やさしさ、人情、いいなぁ。(闇から来た少女から読んでね)



闇から来た少女 ドールズ     高橋克彦著   中公文庫


 『季節外れの大雪に見舞われた盛岡で、夜間、7歳の少女がひき逃げに遭った。はねられたのは、喫茶店「ドールズ」の経営者である月岡真司の娘・怜。彼女は言葉を失い、一方で“人形”に異様な関心を示しだす。喫煙をはじめとする怜の信じがたい奇矯な行動。さらに医学の常識をこえた不可解な症状が彼女の肉体を襲う。少女の心の闇に何がひそんでいるのか。巧みな構成と斬新な着想で、恐怖小説の第一人者が贈る傑作長編』
 親しくなった書店の店員さんに薦められて何年も前に買ったものの積読になっていたのだけれど、もっと早く読めばよかった(笑) 高橋克彦は江戸川乱歩賞を取った「写楽殺人事件」で世に出た人だけれど、歴史についての知識は生半可じゃない! この本でもそれは遺憾なく発揮されるのだけれど、ネタバレになるので書けない! ネタバレ平気なこのコーナーなんだけれど、これは読んでほしい!(爆)
 寝かせている間に版権が角川に移ってるみたい。続編があって即注文。3作目はハードカバーなのよねぇ。迷うところ… (2002.8.29)


パリに眠れシャーロット・カーター著   ミステリアス・プレス文庫

 『失踪中の叔母から突然手紙が届いた。叔母はパリにいるらしい。手紙には“追いつめられている”という言葉が。ナンは現地に飛ぶが叔母はふたたび行方をくらませてしまっていた。さらに、ナンが失踪事件の協力を仰いだ情報屋が刺殺体で発見された!ジャズの香り漂うパリの裏町を、タフなストリート・ミュージシャン、ナンが疾駆する鮮烈なハードボイルド。』
 「赤い鶏」に続くシリーズ2作目。アフリカ系アメリカ人の書いたアフリカ系アメリカ人を主人公においた作品で、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の複雑な感覚というものを、当たり前のことだが、正面から捉えている。ナンはパリでアフリカ系アメリカ人のアンドレと知り合い、愛し合うのだが、彼はアメリカを捨てたい、ナンはアメリカ(ニューヨーク)を捨てられない。それだけのことがなぜ越えられない?と思うのだが、それが越えられないのがアフリカ系アメリカ人の複雑な心理の奥襞にどうしようもなく存在すると、日本は単一民族の国家であると平然と言い放つ政府高官を持つ、お気楽日本国民にもわからせてくれる。
 本題のミステリもこなれてきている。3作目はアメリカでは出版されているらしいけど、訳はまだみたい。ナンという女性を見つづけていたいな。(2002.8.28)



モーセの秘宝を追え!ハワード・ブルム著   角川文庫

 『旧約聖書の時代。モーセと共にユダヤの民がエジプトを脱出したとき、黄金の秘宝をシナイ山に隠したと言われる――。そして現代、二人のアメリカ人冒険家の元に、シナイ山についてのある情報がまい込んだ。シナイ山には黄金が埋まっている可能性が高く、しかもその山はエジプトではなく、サウジアラビアにあるという。旧約聖書を読み解き、シナイ山がサウジにある確信を深めた二人は、軍事的緊張の真っ直中の中東へと旅立った――。事実が小説を凌駕する驚愕のノンフィクション!
 なによりこれがノンフィクションだということがすごい! 聖書なんて昔話・民話の類で、悪くいえば宗教に誘いこむためのワナみたいな気さえしていたのだけれど、それを打ち破って見せる。子どものころ出エジプト記を読んで、モーセが杖をとんとついたら海が左右に分かれて道ができて…云々のあたりで子ども心に「うそばっかり!」と思ってしまった過去を持つ私には驚くべきこと…。細部についてはちょっと納得しかねるところもあるのだけれど(モサドがこれを仕組んだというほのめかしで終わっている点など)、充分に楽しめた。著者は元ニューヨークタイムズの記者で、調査した事実を元に見事な作品を書き上げるストーリーテラーだそうである。
 折りしも、今日の新聞にはサウジアラビアの国王がスペインの地中海沿いの村で総額100億円のバカンスを過ごしているという記事が掲載されている。オイルダラー恐るべしだが、ひょっとするとモーセの秘宝を現金化した可能性もなきにしもあらず…??
 しかし、この売らんかなの邦題のつけ方はなんとかならないものかな。これじゃ、フィクションでしょう。(2002.8.27)




綺羅の柩    篠田真由美著   講談社NOVELS

 『建築探偵 桜井京介の事件簿シリーズ本編 第9作。30年以上未解決のシルク王失踪事件に京介が挑む!1967年イースターの休日、マレーシア山中の保養地から消えたシルク王、ジェフリー・トーマス。今なお知れぬ彼の行方。30余年後、軽井沢の別荘で一人の老人が死んだ。奇妙な偶然と縁に導かれて南国へと旅立った京介、蒼、深春の3人がついにつきとめたトーマス失踪の真相とは?
 う〜ん、ひとことで言ってしまえば未整理な作品。再度推敲を求むってとこかなぁ。編集者は何をしてたんだろう??
 ジム・トンプソン(作中ではジェフリー・トーマス)の行方不明事件(実話)のナゾ解きまで盛り込もうとする意欲は買うけど、消化不良。殺人事件を名探偵が解決するなんて絵空事、言い方悪いけどどれだけ読者をだまくらかすかが勝負なわけなんだから、結局ジム・トンプソンに紙数を割いた分、中途半端に終わってる。残念ながら、もう少し内面を掘り下げないと事件の必然性が見えてこない。それと小さなことだけど、朱鷺のうるささに紙数割きすぎ。読者は女性が多いんだろうから反発買うと思うなぁ。深春を語り手においたのが原因かな。
 
日本国内だけでは舞台が足らなくなってきたのか、海外を舞台に置くことが多いけれど、どうなんだろう? 今回のタイ・マレーシアもきちんと現地取材されてるのはよく分かるけれど、それが駆け足なのもよくわかってしまう(^^; 両刃の剣;ってとこだなぁ。
 ミステリーをトリックで書くのではなくって人間で書こうとする著者の姿勢は評価している。でもその人間って、深い愛憎のみで生きているんだろうか。彼女にとってはそれのみがテーマなんだろうけど、今回未整理な作品を読むことでその欠点が目だってしまったように思う。私について言えば、篠田マジックが解けかかってきたような気がしてならない。次作に期待したい。(2002.8.26)



ハリーポッターと賢者の石  
                           J・K・ローリング著  静山社

 『ハリー・ポッターは孤児。意地悪な従兄にいじめられながら11歳の誕生日を迎えようとしたとき、ホグワーツ魔法学校からの入学許可証が届き、自分が魔法使いだと知る。キングズ・クロス駅、9と3/4番線から紅色の汽車に乗り、ハリーは未知の世界へ。親友のロン、ハーマイオニーに助けられ、ハリーの両親を殺した邪悪な魔法使いヴォルデモートとの運命の対決までの、息を飲む展開。9歳から108歳までのファンタジー。


ハリーポッターと秘密の部屋  
                           J・K・ローリング著  静山社

 『魔法学校で一年間を過ごし、夏休みでダーズリー家に戻ったハリーは意地悪なおじ、おばに監禁されて餓死寸前。やっと、親友のロンに助け出される。しかし、新学期が始まった途端、また事件に巻き込まれる。ホグワーツ校を襲う姿なき声。次々と犠牲者が出る。そしてハリーに疑いがかかる。果たしてハリーはスリザリン寮に入るべきだったのだろうか。ヴォルデモートとの対決がその答えを出してくれる。


ハリーポッターとアズカバンの囚人  
                           J・K・ローリング著  静山社

 『夏休みのある日、ハリーは13歳の誕生日を迎える。あいかわらずハリーを無視するダーズリー一家。さらに悪いことに、おじさんの妹、恐怖のマージおばさんが泊まりに来た。耐えかねて家出するハリーに、恐ろしい事件がふりかかる。脱獄不可能のアズカバンから脱走した囚人がハリーの命を狙っているという。新任のルーピン先生を迎えたホグワーツ校でハリーは魔法使いとしても、人間としてもひとまわりたくましく成長する。さて、今回のヴォオルデモートとの対決は?


言わずもがなのハリー・ポッターシリーズです。毎年買い求めながら読めずにいたのを一気に読みました。「最後のシーンはもう書いて金庫にしまってある」と言うとおり、きちんとした構成の元で物語ができあがっているのがよく分かります。どんどん面白くなって、親世代も登場し、次作がとても楽しみです。映画もね。




パンプルムース氏のおすすめ料理  
                           マイケル・ボンド著  創元推理文庫

 『権威あるグルメ・ガイドブックの覆面調査員パンプルムース氏は、元パリ警視庁刑事。味にうるさい愛犬ポムフリットは老犬ホーム送り寸前で彼にひきとられた元警察犬。とあるホテル・レストランの味のチェックに来た珍コンビに出された期待の皿には、なんと首が!生命を、おまけに貞操まで狙われながらも、パ氏が怪事件に挑む。超傑作ミステリ。


パンプルムース氏の秘密任務  
                           マイケル・ボンド著  創元推理文庫

 『元刑事のグルメ・ガイドブック覆面調査員パンプルムース氏と元警察犬ポムフリットの今回の任務は、編集長の叔母さんが経営するさえないゼロ星ホテル・レストランのたてなおし作戦。靴底とまごう肉や、キツツキもビックリのこちこちパイを出すこの店には、何やら怪しい秘密があるらしい。媚薬がらみの事件に巻き込まれ、ポムフリットまでも大興奮!グルメ・コンビますます快調。
 

パンプルムース家の犬  
                           マイケル・ボンド著  創元推理文庫


 『シャーロック・ホームズを読みながら三つ星ホテル・レストランで休暇を過ごす元刑事でグルメ・ガイド覆面調査員のパンプルムース氏と、「犬立入禁止」の規定で不機嫌の極にある元警察犬ポムフリットが国家規模の一大事に巻き込まれた。有名なデザート・シェフが失踪し、彼を目当てに訪れるアラブ石油王の機嫌を損ねることは、フランスへの石油供給の道が断たれることを意味するというのだ。休暇は緊急任務へと変じ、パンプル・ホームズとポムフリ・ワトスンが行動を開始した。国家の危機を救え!パンプルムース家の犬が低く長く遠吠えをする。

グルメガイドブックの覆面調査員だけあってパンプルムース氏(グレープフルーツのフランス語)の食べる料理が実においしそう…。ワインの薀蓄ももちろんすごい!でまた愛犬のポムフリット(フライドポテト)との呼吸がいい。ポムフリットは高級レストランにもいっしょに入って、ちゃ〜んとレストランの評価にも参加します。
 著者のマイケル・ボンドは
「くまのパディントン」の著者。もちろんイギリス人なんだけど、主人公をフランス人にした方がキャラ的に面白いと思ったんだろうなぁ。
 ロマンチックでもない下ネタがちょっと多いんですよねぇ。 う〜ん、男性向けコージーか?でも男性がコージーを好むとは思えない。で、このシリーズ人気がないんだろうなぁ。
 現実味はマッタクなし。ミステリーとしては始めから素通しに見通せちゃいますけど、硬いことはいいじゃない。グルメ・コンビは快調に楽しいですよ



パンプルムース氏のダイエット  
                           マイケル・ボンド著 創元推理文庫
『「君が太りすぎであるのは逃れられない事実だ!」なんたることか。編集長命令は、ダイエットをかねたヘルスクラブ調査だった。パ氏と美食犬ポムフリットに食事制限など可能か?しかし仕事だ。ふたり(?)がピレネー東部のヘルスクラブに潜入してみると、そこには何やら秘密めいた雰囲気が漂っていた。パ氏と瓜二つの軽薄男も登場して大騒動。飢えたグルメ・コンビの運命は。
ちょっとご都合主義が鼻についてきたかなぁ。犬のポムフリットがあんまり活躍しないし…。次作が出ても買わないかもしれないし、買っても読まないかもしれない…。(2003.1.3)



聖書の暗号   マイケル・ドロズニン著   新潮社文庫

 『ニュートンが死の直前まで研究した「聖書」に秘められた謎。ヘブライ語30万4805字に人類の来し方行く末は暗号として封印されているという謎をコンピュータを駆使し、ようやく白日の下に晒された3000年前の予言。ケネディ暗殺、ホロコースト、天変地異等、的中した事実は数知れず、そして新たに浮かび上がった「World Wide」の不気味な文字。奇跡か偶然か、全世界で轟然たる反響を呼んだ問題作。
モーゼが神から授かったとされている旧約聖書のモーゼの五書を数学的に解析すると、様々な予言が浮かび上がってくると言う。素人考えでは「まさか〜」って感じだけれど、数学的な論文として学術的に認められているし、ペンタゴンの暗号専門家も認めている。
ただ今のところその暗号を正しく読み解く手がかりがまだ見つかっていなくって、起こった事について「あ、ここに書いてあったのか」と言える程度なのが、なんとも中途半端。ただ2006年まで日本で大きな地震の起きる可能性は浮びあがっているらしい。
ニュートンも研究していたのだけれど、大型の演算能力を持つコンピューターができるまでは見つけられなかった。正しく「聖書の暗号」を読み解くには、まだまだ科学の進展を待たないといけないらしい。
「神」ってなにもの?




天皇家はなぜ続いたのか   梅澤恵美子著   ベスト新書

 『天皇に刃向かえば祟られる。長い間人々は、こう考えてきた。十万という軍勢を統率する武士団でさえ、もし「錦の御旗」が掲げられたら、戦うことなく退散することを考えていた。いったい「天皇」のどこに、そのような不思議な力が秘められていたのか。邪馬台国からヤマト朝廷にいたる、日本の歴史の黎明期に登場する女神たちの悲劇を発掘することで、天皇家の不可侵性の起源を解き明かし、さらには歴史の闇に隠された天皇家誕生の秘密に迫る。
表題の「天皇家はなぜ続いたのか」については、天皇家が「氏」を持っていなかったことが、どの氏にも属さず、逆にどの氏から入ってきても拒まない器を作ることになり、中身は変わっても器が重宝なものとして使われていくことになったと言うのである。時の権力者は遷り変わっても、権力闘争のゴールとしての働きというものも無視できない。なるほど、ひとつの考え方だと頷けた。
本書はそれにとどまらず、邪馬台国や大和朝廷についても独自の見解を持っていて、なかなか面白い。
目次
序章 不思議な王権―誰が天皇システムをつくったのか
第1章 ヤマト建国の裏側―祟られる天皇の謎
第2章 祟る邪馬台国の女王―神功皇后に隠された天皇家の秘密
第3章 神(鬼)の名を冠した天皇―ヤマト建国に至る本当のシナリオ
終章 天皇が日向から来た謎―天皇の不可侵性をつくった女神の祟り



捩れ屋敷の利鈍   森博嗣著   講談社ノベルス

 『秘宝“エンジェル・マヌーバ”が眠る“メビウスの帯”構造の捩れ屋敷。密室状態の建物の内部で死体が発見され、秘宝も消えてしまった。さらに、完璧な密室に第二の死体が!招待客は保呂草潤平、そして西之園萌絵。探偵は前代未聞の手法によって犯人を言て当てる。
 講談社ノベルス20周年記念に書き下ろしたサービススペシャル版なんだけどぉ....スペシャルなだけあってこの作品には、S&Mシリーズの犀川先生、萌絵ちゃん、国枝先生の3人とVシリーズの保呂草さんと紅子さんという2つのシリーズの登場人物が出てくるんだけどぉ.....「森ミステリィの極致驚倒の密室」なんて副題がついてるんだけどぉ.....
 元々S&Mシリーズのファンの私としては、萌絵ちゃんが虚仮にされてる感じが面白くないのね。Vシリーズは2、3冊しか読んでないけど、保呂草さんってこんなアヤシイだけの人だっけ? どっちのファンにも受け入れられないと思うなぁ。久しぶりに萌絵ちゃんの本が読めると喜んだのだけれど、残念でした。
犀川先生は声しか出てこないしねぇ...




お買い物日記     谷村志穂/飛田和緒著   集英社文庫

 『あの迷コンビが帰ってきた!お気楽独身生活を満喫するタニムラさんと、主婦兼料理家である和緒先生が、今度はお買物に東奔西走。毎日の生活の中で、または旅先で、はたまた通販のカタログから、選び抜いたお得な逸品が、ずらり46点。日常使いのグラスや京都の老舗の七味、おいしいクルミパン、靴もあれば服もありと、真剣かつ抱腹絶倒のショッピング・バトルを展開。ああ、欲望のタネはつきまじ。

お買い物日記2   谷村志穂/飛田和緒著   集英社文庫
 『美味しいお茶をいれるのが得意な、生活上手の和緒先生。かたや女の子らしいことには少々疎いけど、旅ならまかせての志穂さん。そんな仲良しのふたりが、日々の暮らしと交流の中、選んで買った雑貨の数々。ご近所歩きに最適のサンダルや、食卓に彩りを添える小粋なスパイス。旅に持っていく帽子やノート。毎日が愛しくなる、女同士がもっと楽しくなる、とっておきのものたち46点。

生活の中に"こだわり"があるのってすてきじゃない?それが日常的であればあるほど…。
そんな二人の仲良しさんのとっておきが、ステキなエッセイと写真と共に楽しめます。
買いに走るのもよし、私はこっちの方が好きだわと思うのもよし…。




赤い鶏   シャーロット・カーター著   ミステリアス・プレス文庫

 『サックス奏者のナンは演奏中に出会った男を家に泊めた。が、目覚めて愕然とした。何者かに男が殺され、彼女のサックスの中に大金が隠されていたのだ。数日後、男の恋人が他殺体で発見され、ナンは殺人現場で聞こえたという謎の言葉“赤い鶏”の意味を探る…タフなストリート・ミュージシャン、ナン登場。注目の新鋭がジャズの旋律にのせて贈る新シリーズ。』
ニューヨークの街角でサックスを吹く女性ストリートミュージシャンのナンは、フランス語が堪能で、翻訳の仕事までこなせるほどなのに、街頭での演奏のほうが気に入っている・・・。ストーリーはう〜ん、ハードボイルドな割にウェットで、もひとつかな。ともかく、ジャズのエッセンスが楽しめます。そしてニューヨークの街の描写がこの本を片手にニューヨークを訪ねてみたい気にさせるほど素敵。



漢字と日本人   高島俊男著   文春新書

 ちょっと説明が冗長なんだけど、言わんとするところはわかる。つい先日日本語は論理的な文章を書くのに不向きだと新聞にも書いてあったけれど、それは日本人が論理的な思考をし、その結果論理的な日本語を持つまでに、漢字が入ってきてしまったからだと説く。そういう考え方もあるかもしれない。とにかく論理的な文章を書こうとすると漢字だらけになるもの。
目次
第1章 漢字がやってきた(カテーの問題
世界でたったひとつの文字
漢語とはどういう言語か
不器用な日本人)
第2章 日本人は漢字をこう加工した(訓よみとかな
日本語の素姓
漢字崇拝という愚)
第3章 明治以後(新語の洪水
翻訳語―日本と中国
顛倒した言語―日本語
「歴史」と「進歩」)
第4章 国語改革四十年(漢字をやめようという運動
国語改革とは何だったのか
当用漢字の字体
新村出の痛憤)
終章 やっかいな重荷


庭に孔雀、裏に死体   ドナ・アンドリューズ著   ハヤカワ・ミステリ文庫

 『わたしは母と親友と弟、三つの結婚式の花嫁付添人を頼まれ、式の準備に追われていた。衣裳選び、式に彩りを添える孔雀の調達などと、やることは山ほどあるのに、家の裏から死体が見つかったせいで、ミステリ好きの父にひっぱられて犯人捜しをするはめに…スーパーウーマン、メグと変人揃いの親戚一同の活躍。謎解き、ユーモア、ロマンスが融合したアガサ賞、アンソニー賞、マリス・ドメスティック・コンテスト受賞作。』
 主人公が元気、たくましい。もうはちゃめちゃな登場人物たちなんだけど、いやみなく楽しい。こうゆうのをスラップスティックっていうのかしら。ユーモアミステリにも次々に新人が出てきてくれてうれしい。続編↓と合わせて、楽しんでください。

野鳥の会、死体の怪
  ドナ・アンドリューズ著   ハヤカワ・ミステリ文庫

 『静けさを求めてわたしが訪れたのは野鳥の島。なのに嵐で島は大荒れ、トラブルメーカーの両親までついてきて静けさは遥か彼方。おまけに見つけた死体が母の昔の男だったせいで、父に殺人容疑が!父の容疑を晴らしたいけど、島を牛耳るバードウォッチャーは人殺しより、時を同じくして起きた鳥殺しに夢中で、調査も荒れ模様。素人探偵メグと変人軍団に安息はない。』
 同じく楽しいバタバタコメディ。前作↑でしっかりゲットした恋人と相変わらずゆっくり落ち着けず…。頑張るヒロインがかわいい。




ショッピングの女王  中村うさぎ著   文春文庫

 『「それ、いただくわ」。このご時世に、この浪費―。シャネル、エルメス、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドからエロ・グッズまで。住民税を滞納し、“むじんくん”にまで手を染めながらも、うさぎ女王様の物欲は止まらない。物欲のままに無駄遣い生活を続ける女王様のトンデモない日常を描く爆笑エッセイ。』
 週刊文春に連載されてるらしい。ほんとにあきれるくらいの買い物をするんだけど(服代だけで年2000万円!)、自分でそれがばかみたいってちゃんとわかってる。そこが、世間への風刺になってておもしろ〜い! ストレス解消に自分で買い物に走るよりうさぎさんに行ってもらおう! 続編もあるみたい。ささやかな浪費をどうぞ〜。
うさぎさんはジュニア向けファンタジー小説の作家らしい。




伯爵夫人は超能力  ドロシー・ギルマン著   集英社文庫


 『マダム・カリツカはヨーロッパの貴族と結婚して伯爵夫人の称号をもっている。数奇な人生を送った後、現在はアメリカ東海岸の町でアパート住まい。彼女には超能力があって、相手の所有物をその人の手のひらに置くと、性格、過去、未来まで読める。これまでそれを生活の糧にしたことはなかったけれど、不思議な夢のとおりに「読み、承ります」の看板を出したとたん、運命が大きく変わって…。』
 おばちゃまシリーズのドロシー・ギルマンの新シリーズです。超能力をつかって捜査に協力する連作の短編集になってます。ま、上品な読み物って言うところかなぁ。




クッキングママの超推理  ダイアン・デヴィッドソン著   集英社文庫

 『イギリスから移築された本物の城で開催される「エリザベス朝の祝宴」。そのケータリングを依頼されてゴルディは大張り切り。ところが初日の朝、家の窓ガラスが何者かに銃で撃たれる始末。夫のトムは逃亡犯を追って家にいない。警官がかけつけてくれ、やっと城に向かったものの、今度は死体を発見する。しかも、その顔に見覚えがあった…。大好評!レシピ付き料理ミステリー第10弾。』
 なんか読むたびにいらいらさせられるって分かってるんだけど、買ってしまうシリーズ。ゴルディや助手のジュリアンの作る料理がおいしそうなんだもん(レシピ付)。いらいらさせられるのはゴルディがそういう人間だからなんだって気がついた。きちんと仕事をしてる人間のはずなのに、合理的にものが考えられず、ひどく感情的。しかもそれが探偵役なんだからねぇ、いらいらもしようというもの…。彼女の感情に振り回されずに読める方におすすめ。





美人姉妹は名探偵
  ジェイン・ヘラー著   扶桑社文庫

 『いまだ独身のデボラは昼メロドラマの脚本家。一方、姉のシャロンは離婚歴3回の恋愛魔。まるで水と油、会えば姉妹ゲンカのふたりだったが、ママが心臓発作で倒れたとあっては協力し合うしかない。そこに現れた素敵な医師ハーションに、ふたりそろって一目惚れしたものだからさあ大変!しかし間もなくハーションが何者かに殺害され、なぜか嫌疑の目はふたりの上に…ちょっと待って、わたしたち犯人じゃないわ!果たしてデボラは真犯人を見つけられるのか?底抜けに楽しいロマンティック・ミステリー決定版。』
 決定版かどうかは分からないけれど、けっこう楽しく読みました。ドタバタコメディですね。B級映画の脚本になりそう・・・





世界地図から地名の起源を読む方法
               辻原康夫著   KAWADE夢新書


 『地名はある日突然、何の脈絡もなく出現するものではない。誕生し受け継がれていく必然性が、必ずある。その地の人々の営みや文化の継承、神話や伝説など、そこには土地に刻まれた様々なドラマが秘められているのだ。古今東西の地名の由来を読み解き、その本来の意味を探ってゆく。』と言う本で、あ〜、なるほど〜、ふ〜んでおしまい。あんまり賢くなった気もしない(^^;;
目次
1章 アジアの地名の起源―世界最大の大陸を舞台に地名はどう生まれ、どう旅したか
2章 中東・アフリカの地名の起源―中東「スタン」地名の由来から、アフリカ地名と欧州との関係まで
3章 ヨーロッパの地名の起源―ケルト、ゲルマン、スラブ…地名から民族と国家の活動が見えてくる
4章 アメリカの地名の起源―大航海時代、開拓時代の地名から新興大陸ならではの地名文化を読む
5章 オセアニアの地名の起源―“幻の大陸”命名までの歴史から、ハワイに残る地名伝説まで
6章 世界全般の地名の起源―民族国名、河川名、神話地名…こうして地名は誕生した




猫は郵便配達をする  リリアン・J・ブラウン著   ハヤカワ文庫

 ご存知シャム猫ココシリーズ20冊目
『もと新聞記者のクィラランは莫大な遺産を継いで、ピカックスに移り住むことになった。相続に付随する郵便物の山は悩みの種でも、郵便配達に凝っているシャム猫ココと、美人弁護士に助けられて、頬はゆるみっぱなしだ。もちろん好奇心は健在で、過去の失踪事件を調べはじめるが、とたんに不審な事故が続発する。そんなとき、ココがくわえてきた手紙に、事件を解く健となる、意外な事実が!シリーズ初期に書かれた未訳作品。』猫はブラームスを演奏するに続く、6作目にあたる作品です。
無用な説明はいらないですねぇ。楽しいシリーズです。


猫は流れ星を見る  リリアン・J・ブラウン著   ハヤカワ文庫

 ご存知シャム猫ココシリーズ21作目
 『平和な夏休みを求めて、いつものようにムースヴィルの別荘にやってきたもと新聞記者のクィラランとシャム猫ココ。独立祭パレードを前に折りしも静かな村はバックパッカーがUFOに拉致されたという奇妙な噂で持ちきりだった。それに呼応するかのように、ココは夜空を見上げてばかり。やがて湖から失踪した旅行者の死体があがり、ヒゲにふるえを感じたクィラランは調査に乗り出す。シャム猫ココが、星に訊ねた真実とは。』

 これは正真正銘の21作品目。う〜ん、ややこしい。記憶が飛び飛びになってしまう…。
 でもこのシリーズ、好きだなぁ。猫を過不足なく出すのって難しいと思いません? 出すぎると嫌味だしねぇ。大好きなシリーズです。